ルペラ博士が提唱するのは、心理学的・脳神経科学的な理論に基づく「人間関係を整え、根底の自分を癒やす」ためのアドバイス。同時にこれは自分を愛して生きるためのガイドブックとも言える。
その第一歩は、親との関係や育った環境によって形成された「条件づけられた自己」を見直すこと。そうすれば、大人になっても繰り返される「関係性のパターン」に巻き込まれ、自分や相手を傷つけることを防げる。
さらに本書では、自律神経の働きにも注目する。「安全でない」と感じた身体の反応こそが、愛ある関係を遠ざける原因になるからだ。心と身体の調和を取り戻す「ハート・コヒーレンス(Heart Coherence)」の実践と、自己観察を深めるワークを実践してほしい。
自分を理解し、自らに愛を注ぐことが、他者との健全なつながりを築く出発点となる。健やかな人間関係とは外から与えられるものではなく、自分と向き合い、内側から育てていくもの。
立ち読みコーナー
「はじめに――あなたが変化を生み出す」より
あなたがこの本を読んでいるのは、おそらく人生にストレスを感じる人間関係があるからだろう。相手が恋人であれ、親、きょうだい、子ども、友達、もしくは同僚であれ、誰かとの力関係を変えたいのではないだろうか。そして、多くの人と同じように、なるべく早く変化を起こしたいはずだ。中には、その関係を頑張って続ける価値があるのか、修復の可能性があるのかどうかもわからずに悩んでいる人もいるだろう。あるいは、人間関係を結んだり維持したりするのに四苦八苦し、将来一人ぼっちになるんじゃないか、と心配している人もいるかもしれない。
わかる。臨床心理学者として働いた10年間に、「永遠の愛を見つけたい」「もめごとを繰り返すのをやめたい」「不健全な習慣を断ち切りたい」と心から願うクライアントに山ほど出会ったからだ。個人やカップルや家族のセッションで、よく似たパターンを繰り返し目にした。みんなよかれと思って頑張っているのに、望み通りの人間関係を結んだり維持したりできず、どんどんイライラと怒りを募らせていった。
私のクライアントのほとんどは、人間関係の本を読んで、何かが、何でもいいから役に立ってくれないかと、時間をかけて最新の戦略やら手段(ツール)やらをもれなく試していた。そして多くの人が、「愛の言語」という概念を耳にしていた。これは結婚カウンセラーのゲーリー・チャップマン博士が1992年に書いた『愛を伝える5つの方法』(いのちのことば社)という本で、広く知られるようになった考え方だ。チャップマン博士の理論によると、パートナーに具体的な方法――スキンシップ、一緒に過ごすクオリティ・タイム(質の高い時間)、贈り物、肯定的な言葉、もしくは(ベッドメーキングや夕食づくりなどの)サービス――で愛情表現してほしい、とお願いすることで、二人の絆が深まるという。
基本的に、外に変化を求める――他人が行動を改めて自分の欲求を満たしてくれる、と期待する――姿勢が、ほとんどの対人関係セラピーの共通要素だ。セラピストや本や考え方によってアプローチや手段(ツール)はまちまちだけど、基本的なメッセージはだいたい同じ――他人の欲求に応えるためには、何らかの形で自分を変えなくてはならないし、自分の欲求を満たすためには、他人を変えなくてはならない。
理屈の上では、人間関係で「支えられている」「つながっている」と感じられないなら、行動を改めてくれるようお願いするのはいい考えに思えるだろう。でも、実生活でこのアプローチを取ると、裏目に出ることが多い。他人を変えることはできないし、その人に染みついた人間関係のパターンを改めてほしいと期待したところで、たいていうまくはいかない。少なくとも長続きしない。それどころか、外に変化を求めたことでお互いにぴりぴりし、感情的になったり不満が噴き出したりして、対立が長びいて溝が深まるだろう。一生腹を立て合い、見下し合う羽目になるかもしれない。
「じゃあ、一体どうすればいいの?」と、(当然)あなたは言うだろう。他人が自分に合わせてくれるのを期待してもうまくいかないなら、一体どうすればいい? 私も長年、同じ疑問を抱いていた。
――中略――
この本では、私が学んだ情報や手段(ツール)をご紹介し、自身の心(ハート)に還るあなたの旅のガイド役を務めたいと思う。ページをめくるうちに、自分のすべて― 身体、心、魂― とのつながりを取り戻す方法が見つかるだろう。
本書で学んでいただくのは、自分が人間関係で演じているさまざまな「条件づけされた自己」に気づく方法、自分の欲求に気づいて満たす方法、高ぶった感情をなだめる方法、そして最後に、自分のハートに宿る無限の「愛する力」とのつながりを取り戻す方法だ。
あなたの旅もこの本も、自分のハートとの関係を修復すると同時に、周りの人のハートとの関係を修復するためのものだ。自分のハートとつながってそれを大切にできて初めて、相手のハートとつながってそれを大切にできるのだ。
ハートに宿る無限の英知や直感とのつながりを取り戻せば、誰かといても一人でいても、自分を幸せに満たせるようになる。あなたはこの旅を通して、周りに愛を広め、個人としても、パートナーとしても、家族の一員としても深い潜在能力にアクセスできるようになって、最終的に世の中に恩恵をもたらせる。自分が求めている愛そのものになることは、自分や周りの人たち、ひいてはみんなが暮らす世界に対するこの上ない癒やしであり、最高の贈り物だ。
あなたのハートには、人間関係を変え、周りの環境を変えるパワーがある。一人一人の中に宿る愛こそが、あらゆる癒やしの真の源なのだ。
本書への賛辞
「ルペラ博士が大好き。本当に助けられています」
――グウィネス・パルトロウ(俳優、『恋におちたシェイクスピア』『アイアンマン』などに出演)
「本当のつながりと愛を、まわりの人たちや傷ついた世界に広げるための、実践的でひらめきに満ちた入門書」
――ガボール・マテ博士(医師、『身体が「ノー」と言うとき――抑圧された感情の代価』[日本教文社]の著者)
「幸せで満ち足りた人生に欠かせない人間関係を築くための、愛情、忍耐、力強さがみなぎるガイド。本書は、気づきと共感にあふれた傑作だ」
――ジェイ・シェティ(講演家、ポットキャスター、『モンク思考――自分に集中する技術』[東洋経済新報社]の著者)
「つながりとは、今まで教えられてきたものではない。身体的・感情的・精神的なプロセスであり、まず自分自身とつながることで、出会うすべての人々とつながることができる。もっと幸せで、もっと充実した、もっとつながりのある人生を望んでいるなら、この本こそぴったりのツールキットになる」
――シェファリ・ツバリ博士(臨床心理士、『「良い親」をやめれば「生きる力」を持つ子が育つ』[宝島社]の著者)
「『ホリスティック心理学 コミュニケーション編』は素晴らしい本だ。ニコル博士は独自の“超能力”で、複雑な心理学理論や神経科学の知識をわかりやすく伝えてくれる。彼女は自分自身の思考、身体、心(ハート)、魂を共有しながら、読者一人ひとりの人間関係の課題を明らかにし、自らの行動に責任をもって世代を超えたトラウマを癒やすよう導いてくれる。この本を読めば、本当の自分とつながり、人生に健全なつながりを築くことができる。より平和で愛と調和に満たされた世界で共生する術が学べるだろう」
――フランク・G・アンダーソン医学博士(トラウマ治療の医師、『内的家族システム療法スキルトレーニングマニュアル』[岩崎学術出版社]の著者)
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